情報処理技術者試験を攻略!経営とシステムを繋ぐITストラテジスト試験(ST)攻略法

情報処理技術者試験を攻略!経営とシステムを繋ぐITストラテジスト試験(ST)攻略法
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IT関連の資格取っていますか?資格を持っていると、自分の技術力がどの程度あるかを公的に保証してくれるなど、いくつものメリットがあります。資格を取ることは、少なくとも、早く出世したい場合やワンランク上の仕事をするためには、欠かせないといえます。

その中でITストラテジストは、経営とシステムをつなぎ、自信の視座(視点)を高めることで、サラリーマンSEを卒業し、ビジネスマンとして踏み出すための重要な資格です。

この記事では、そんな情報処理技術者試験のST試験の概要と、合格のための勉強方法、コツをお教えします。

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IT関連の資格を取得することのメリット

SEがIT関連の資格を取得することには、例えば、以下のメリットがあります。

  • 自分の技術力がどの程度あるかを公的に保証してもらえる
    • ワンランク上の仕事をやり遂げられると上司に思ってもらえる
    • 即戦力であるというアピールが出来る
    • 転職も視野に入れる場合は必須
  • 技術力の基礎知識が身につくため、実際の現場でも成功しやすい
  • 資格取得により、自身を高めようとしている姿勢を示せる
  • 会社によっては資格取得の手当を貰える

出世は、結局のところ、上司に「ワンランク上の仕事を任せても大丈夫」と思われるかどうかですので、これらのメリットは出世に非常にかかわるといえます。

図は、IPAのwebサイトに記載されている試験のメリットの一つ「技術の多様化・需要変化に対応できるITエンジニアの育成」における図です。環境変化に対応できることはSEの至上命題ですので、そういう人材であることをアピールできることも大きなメリットですね。

情報処理技術者試験(ST)概要

どういう人が受けるの?

IPA(情報処理推進機構)では、ST試験の対象者を以下のように定義しています。

高度IT人材として確立した専門分野をもち、企業の経営戦略に基づいて、ビジネスモデルや企業活動における特定のプロセスについて、情報技術(IT)を活用して事業を改革・高度化・最適化するための基本戦略を策定・提案・推進する者。また、組込みシステム・IoTを利用したシステムの企画及び開発を統括し、新たな価値を実現するための基本戦略を策定・提案・推進する者

https://www.jitec.ipa.go.jp/1_11seido/st.html

ストラテジスト=戦略家という意味ですので、経営に基づいて、どのようにITを活用していくかの戦略を作る人です。SEとしての経験をある程度積むと、システムが経営の中でどのような役割を担っているかを意識して仕事をし始めるため(もし、まだそういった意識がない人は、この記事を機会にぜひ意識してみてください)、PMや営業支援などで顧客の経営層と話したことがある人であれば、実際の実務経験はなくとも、十分、受験する意味はあると思います。

実際、IPA公表の統計値によると、受験生の内、普段の業務がシステム設計やプログラム開発の方も20%程度いる上、その人たちの合格率も13~14%と決して不可能ではない数字となっています。

また年齢別にみると、30代後半~40代前半が中心となっており、その時期に経営を見据えた仕事に切り替わる人が多いということがうかがえます。

資格試験は所詮テストでしかなく、落ちたところで(自分以外には)誰に迷惑をかけるという話でもないので、積極的に資格取得を目指しましょう!

試験のスケジュール(出願~合格発表までの流れ)

試験日

原則として、10月の第3日曜日に実施されます。(2020年については、コロナの影響で中止。)

出願期間と出願方法

試験日の3か月程度前(例年7月中旬ごろからの1か月間)となります。

出願は、情報処理技術者試験センターのwebサイト(こちら)から簡単に申し込めます。また、情報処理技術者センターや全国の書店から願書を入手し申し込むこともできます。

受験手数料は、5700円(税込み)です。webから申し込む場合には、受験者本人名義のクレジットカードが必要になるので注意してください。

ちなみに、受験票は、以外とギリギリ(おおむね試験月の月初)に発送されますので、申し込み後受験票が届かなくても焦らなくてOK。気になる方は、申し込み確認メールが来ているかを確認したり、webサイト上から発送日を確認してみましょう。

午前Ⅰ免除規定

応用情報技術者に合格・もしくは各種高度系午前Ⅰ試験の合格基準点を突破した人は、その後2年間、午前Ⅰ試験は免除されます。

ただし、免除のためには、受験申込みの際に記入する「願書」の「一部免除申請番号」に番号を記入する必要があります。午前Ⅰは覚えるだけで合格できるとはいえ、その勉強時間がもったいないことは間違いないため、免除できる人は忘れずに免除してもらうようにしましょう!

合格率

平成21年から平成31年の受験者の合格率は、13~16%です。

普段、システム化戦略・企画・計画に従事している方の合格率が、17.9%、それ以外の業務に従事している方の合格率が14%(令和元年ベース)であり、極端な差があるとは言えなうくらいの差ですので、普段の業務というよりは、どう勉強したかの方が大切だといえます。

勉強時間例

いくつかの参考書記載のサンプルによると、勉強期間は、割と幅があり、1~6か月程度、1日の勉強時間は、30分~2時間程度という方が多いようです。

某参考書では、午前1、2の番強に10週、午後1,2の勉強に6週、過去問に6週、まとめ2週の合計24週がサンプルとして載っていました。

私自身は、勉強期間は1か月、1日30分という感じでした。

合格発表日程と解答速報の確認方法

受験後の気になる解答は、午前は実は当日のうちにIPAの公式HP上で発表されます。もし、受験をして解答速報が記なる方は、こちらへどうぞ!

一方で午後の試験は、合格発表直前までIPAでは発表されません。(合格発表はおおむね2か月後です。)

それまでに午後の解答が気になる方は、一部資格試験の学校などで解答速報を公表しているので、そちらを確認しましょう。

例えば資格の学校TACでは、テスト後3日程度で解答を公開することが多いようです。TACへはこちらからどうぞ。

試験時間別攻略法

午前Ⅰ

概要

応用情報技術者試験の午前問題の内、30問が出題されます(すべて選択問題です。)全分野から出題され、テクノロジ系17問、マネジメント系5問、ストラテジ系8問程度の割合で構成されています。

試験時間は、9:30-10:20(途中退室不可)で、合格点は60点です。

勉強方法

勉強方法は応用情報技術者試験の過去問(できれば直近5年分など)をやって、答えを覚えましょう。一部計算問題などを除き、過去問と同じ問題が多く出る分野などもあるので、そういう分野に絞って覚えるなどの方法も有効です。

とにかく1問1答が出来る次のような問題集がベストです。ただし、出来るだけ最新のものを買いましょう。

以下で紹介している問題集が、午前Ⅱも勉強できる上に、他の試験区分でも利用できて、おすすめです!

午前Ⅱ

概要

午前Ⅱも4択問題で、25問出題されます。出題範囲は、セキュリティ系が1~2問、残りがシステム戦略、経営戦略、企業と法務から出題されます。

試験時間は、10:50-11:30(途中退室不可)で、合格点は60点です。

ポイントと勉強方法

午前Ⅱは、基本的に使いまわされており、過去に他試験などで出題された午前Ⅱ問題などから出題される問題も非常に多く、さらに解答まで同じであることも多い(類似問題まで含めた流用率は70%もあります)ため、専用の問題集を買えば、合格は難しくないです。とはいえ、覚えることは多いため、勉強時間はそれなりに確保しましょう。また、高度試験共通で使える午前Ⅱ問題集を利用する場合、PM試験では出題されない問題も収録されているので、余分な問題を勉強しないように注意しましょう。

次の問題集は、高度試験の午前の勉強が(PM以外の試験区分も含めて)1冊で勉強でき、さらに、各問題がどの試験区分で出題されるのかが非常にわかりやすくなっているため、おすすめです。ただ、過去のテストからの再出題は、再出題がされやすいのが直近○年間などとある程度決まっているため、出来るだけ、最新の問題集を買う方がよいです。

午後Ⅰ

概要

午後Ⅰは、記述式で、4問中2問を選択して解くことになります。

出題範囲は、以下です。

  • 業種ごとの事業特性を反映し情報技術(IT)を活用した事業戦略の策定に関すること
  • 業種ごとの事業特性を反映した情報システム戦略と全体システム化計画の策定に関すること
  • 業種ごとの事業特性を反映した個別システム化構想・計画の策定に関すること
  • 事業ごとの前提や制約を考慮した情報システム戦略の実行管理と評価に関すること
  • 組込みシステム・IoT を利用したシステムの企画,開発,サポート及び保守計画の策定・推進に関すること

試験時間は、12:30-14:00で、合格点は60点です。

出題傾向としては、情報システムから3問、組み込みシステムから1問出題されます。情報システムからの3問の内訳は、「業種ごとの事業特性を反映し情報技術(IT)を活用した事業戦略の策定に関すること」「業種ごとの事業特性を反映した個別システム化構想・計画の策定に関すること」からの出題が87%と、ほとんどの問題を占めているため、まずは、ここを押さえましょう。

ポイント

ITストラテジストの午後Ⅰ問題は、論理パズルに近い側面があります。というのも、問題は非常に良問で、文書中の手がかりを探し出せば、別解なく、一つの解答にいきつけるようになっています。

それを踏まえて、ポイントは、以下となります。

  1. 回答の手がかりを文書中から見つけ出すために、問題文で課題や違和感のある箇所について下線を引きながら読み進める。
  2. 問題文に明示されている内容以外に、勝手に制約を想定して考えない。
  3. 回答は下書きする。ただし、時間には常に注意を払って下書きに時間をかけすぎないようにする。
  4. 表現に迷った場合は、本文中のキーワードをそのまま利用する。ただし、文字制限がある場合には日本語にはそれほどこだわらず、まずは文字制限をクリアする文にする。(○○の○○の○○の○○などといった「の」が続くような日本語でもOK)
  5. 設問文を読んでから、本文を読み進める。
  6. 設問文の中の表現に注意して回答を作る。(例えば、xxの特性を踏まえて、や具体的になど、細かな表現が回答の制約となることが多い)

午後Ⅱ

概要

ここまで来れば合格まであと少し!

午後Ⅱは論文問題になります。3問出題され、1問を解答します。

出題範囲は午後Ⅰと同じです。2問が情報システムから、1問が組み込みシステムから出題されます。また、どの問題も特定の業種の知識を必要とすることはありません。

試験時間は、14:30-16:30で、論文はA~Dの4段階で評価され、A評価のみ合格です。

とかくと、難しそうですが、次のルールを守って書きさえすれば、評価AまたはBになるため、実は、それほどは難しくありません。

ルール1:必要字数の範囲に収めること

当たり前ですが、各設問は、字数が決まっており、その字数の範囲内に収まらない場合は、不合格になります。

ちなみに、合計で2200文字~3400文字を手書きで可能な限り読みやすく書く必要があるため、文字を書くスピードと綺麗さが意外にハードルになります。(ITの試験なのに、なんでパソコン入力じゃないんだろうとは思いますが。)

ルール2:問題文から、要求項目を漏らさず章立てを作成する

論文内で記載することを求められている要求事項をすべて書きましょう!

ふつう、論文というとテーマが決まっていれば、構成(章立て)を、読者がわかりやすいように、自由に決めるかと思います。しかし、試験の論文はそうではありません。正解の章立ては、決まっています。しかも、問題文を見るだけで、章立ては自動的に決まります。

こちらの記事【情報処理技術者高度試験の難関午後Ⅱ論文の裏ワザ】で章立てを自動的に決める裏ワザを紹介してるので参考にしてみてください。

ルール3:システム概要については、事前準備しておく

論文本文の話ではなりませんが、システム概要について専用の用紙に記載する必要があります。注意点としては、下記です。

  • 「あなたの担当業務」は「情報システム戦略策定」か「企画」です。他は選ばないようにしましょう
  • 「あなたの役割」は「全体責任者」「プロジェクトマネージャー」を選びましょう
  • 総工数とチームの構成人数と、期間で矛盾のないようにしましょう

その他のポイント

それ以外の細かな論文記載上のポイントです。

  1. 実体験以外(たとえば、伝聞や仮定のプロジェクトを置いての記載)はNGです。(真偽によらず)実体験として、書くようにしましょう。
  2. である調で記述しましょう
  3. 事前に骨子としてストーリーを作ってから書き始めましょう
  4. 「私は」を適宜入れて主語を明確にしましょう
  5. 自分の意見を言う時には、「考える」と表現しましょう(思うなどは弱気にとらえられる)
  6. 「一般的には」「おそらく」などの曖昧表現は使わず、言いきりましょう
  7. 数値をつかって定量的に表現すると説得力が増します。できれば、数か所に使い、具体性をアピールしましょう

午後Ⅱの勉強方法

問題集を使って、過去問を行うというのが基本です。2時間で2800文字を書くペースをつかむためにも、必ず一度はやってみましょう。

また、過去問の解説を読むだけでも採点の視点が養われるので有用かと思います。

過去問は、IPAのwebサイト(こちら)から取得できますよ!

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